美濃 松尾山城  測らずにいられない美しい縄張りの詳細

美濃 松尾山城  測らずにいられない美しい縄張り
久太郎の戦国城めぐり
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記事タイトル 美濃 松尾山城  測らずにいられない美しい縄張り
概要

美濃 松尾山城(長亭軒城) (岐阜県不破郡関ケ原町松尾・松尾山)お城に行くのも楽しみですが雨の休日はいそいそと映画館に行くのも楽しみッス。(お城も映画も、基本一人で行きますが、・・何か?)少し前ですが『アルキメデスの大戦』を鑑賞した時の興奮は忘れられません。劇中のセリフの中での菅…… more 田将暉さんが演じる主人公、櫂直(かい ただし)と少尉の柄本佑さん演じる田中正二郎の掛け合いは特に印象に残っています。停泊していた戦艦長門への乗船許可を取り、甲板からメジャーで測っていくのですが・・。呆然とする田中に櫂が「君はこの船を測りたいと思わないのか?変わってるな!」と。また戦艦の設計図を見て「実に美しい」と悦に入ったりと・・。これ、そのまんま城に置き換えることができそうです。「僕は何でも美しいものは測らないと気が済まないたちなのだ。」・・その気持ちよ~くわかります!(笑)。素晴らしい城の縄張りを目の当たりにして「測りたい」と思ったり「美しい」と思うこと。常人から見ると「変態」に見える挙動もむしろ健全な発想だったりします。そんな「測りたくなるような美しい城」松尾山城を訪ねてきました。北の麓から松尾山城を見上げます。(ちょっと標識を利用して入れてみました)松尾山へは所々に案内標識があってわかりやすいです。途中に東名高速道路や東海道新幹線の高架下を通過していくでしょう。山自体はそれほど急峻な山ではありません。ウェルカムチックな「違い鎌」幟旗が並べられ、まるで陣を訪れるようです。松尾山登山者の駐車場には車8台ほどとサイクル自転車等が停められます。平日はそうでもありませんが週末は結構混みあうことも・・。それだけ皆さんの関心が深い史跡、ということになりましょうか。ここから30分~40分の登山コースを辿ります。 道はかなり整備され砂利が敷かれていたり、遊歩道もしっかりしています。足元ばかりを見ていると気づきませんが、励ましの一言に期待が増します。松尾山城の別名は「長亭軒城」ともいいます。大永年間(1521~1528)に堀氏によって築かれたのが最初らしいです。その後浅井長政の命で堀次郎と樋口直房が入城。美濃の織田信長に対抗するために境目の城として機能していました。山頂部が主郭部の中心地で現在休憩東屋が設けられています。土塁にぐるりと囲まれた本丸。本当によく整備されて気持ちがイイ~。周りを見渡すとずら~と土塁に囲まれていることがわかります。城は小早川秀秋の陣、としてのほうが有名ですが・・。単なる陣城ではないな?と思わせるような周回土塁です。関ケ原の合戦では当初西軍の一翼として小早川秀秋が陣を構えた場所でもあります。雄大な伊吹山も間近に見ています。関ケ原の麓方面も一望に見渡せますね。ここからは決戦が繰り広げられた各陣の位置・様子が完全に把握できるようです。頂上に設けれた史跡位置図と照らし合わせてみる。ここで改めて思うんですが・・、狭いですね、関ケ原。こんな狭い所で両軍約15万人の総勢がひしめき合って戦ったなんて・・。そしてわずか半日で決着がついてしまっただなんて・・。本丸の周囲には高さ1メートル程の土塁が取り巻いています。土塁の厚みもありながら、その向こうは急斜面の切岸です。幅のある土塁はその上を歩く事も可能です。(史跡につき思いやって歩きます)。歩きながらその外側、傾斜勾配のきいた切岸を堪能することもできます。土塁は主郭南側に通じる枡形虎口へと繋がっています。土塁の切れ目からL字型に折れて出入りするようになっています。直進できないように土塁と櫓台が組まれているのが見所です。枡形虎口へと至る南からの坂道は土橋状に加工されています。道の両脇は堀切となっており一度に通れる人数を制限しています。そこに上部、櫓台からの横矢掛け、土塁内側からの迎撃も可能としています。守備側にとってかなり有利なこの遺構、計算しつくされた感があります。各曲輪の外周に見られる土塁。主郭部につながる尾根曲輪には土塁が巡る曲輪が見られます。やはり曲輪の重要性に応じて設けられたと思われます。主郭部から遠くても侵入想定経路の曲輪にはキチンと設けられているようです。曲輪同士を連絡する堀切には土橋が通っています。主郭部の切岸を側面から。主郭部から北に派生した尾根は主に切岸に依存した曲輪群となっています。主郭部から西、西南に展開する曲輪群は収容力重視といった感じでしょうか。主郭部以上の広さがある西曲輪群。築かれた時代の時期に差があるのか、技巧的な遺構は見られません。しかしその収容力と丁寧に切岸が周囲にかけられた様は見劣りするものではありません。大きな穴凹は何のため?狼煙焚き用なん??堀切の上にあたる端部には土塁が設けられているパターンが見られます。大規模な曲輪が重なり合う箇所も見応えがあります。西曲輪の端部、食い違うように土橋と堀切を交互に設けます。二重堀切、といってしまえばそうなのですが・・、堀切の位置を左右少しずらしているのがわかります。こういった外部からの侵入に対する細かい遺構も感じ入りますね。主郭部と西曲輪の間、谷部にも遺構が展開しています。谷部からの直進を抑える土塁を設けています。これも通行ルートに制限を加える導線への備えだと思われます。松尾山城はその谷部を巨大な横堀として利用している様子がみられ、面白いです。谷鞍部を巨大な横堀に見立てて普請した苦労が感じ取れます。本来は自然谷としてあったものを駐屯地仕様とするためか城内に取り込み挟撃可能ルートとして活用しているようです。まるで一つの城内に本城(主郭部)、支城(西曲輪)を併せ持たせたような相関でしょうか。谷部遺構の先には水の手かと思われる湧き水も確認できます。(個人的意見ですが)東西南北に展開する美しく惚れ惚れするような縄張りだと思います。松尾山城が最終的に改修された時期は石垣も多用された時期のはずです。しかし石垣は見られず土での普請と発達した虎口を備えた長塁型城郭に仕上げられました。この点では中世戦国の土造り城、最終型の例といってもいいかと思われます。なかなか写真表現できないので割愛しましたが、長大な竪堀などもとても見応えありでした。降って、また登っての繰り返し、測って、見比べて繋げてみて、の繰り返し・・。そんな五感フル活動の松尾山調査・散策となりました。関ケ原合戦直前の毛利氏入城予定地としての松尾山・・、それまでの預かり城主、伊藤長門守盛正が守備した松尾山・・、その松尾山から盛正を追い払って占拠した小早川秀秋・・。本当は触れなけらばならない重要事項も多々あるのですが、ここでは省略です(∀`*ゞ)エヘヘ。歴史的背景や城史・研究成果等は書籍や各HPの松尾山城の項で詳しく知ることができます。ここでは現地で歩き回って測り回っていくほどに、ここが単に「小早川秀秋の陣」としてではない、もっと以前からの軍事重要拠点として、政治・政略の力が働いた場としての念を書き留めてみました。そうした現地で体感し考察した自分なりの味わいこそが自分の城めぐりスタイルであります。2021年も間もなく暮れようとしていますが来年もいろいろな城に行きたいな~と思います。皆様のご多幸、ご多城をお祈りしております。本ブログに目を通してくださったすべての偏屈な同朋の方々におかれましては心より感謝申し上げます。どうか2022年が良い年になりますように・・。 close

美濃 松尾山城  測らずにいられない美しい縄張り
サイト名 久太郎の戦国城めぐり
タグ 不破郡関ケ原町の城めぐり
投稿日時 2021-12-30 00:40:26

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