美濃 東殿山城(赤谷山城)  5つの起伏と断崖絶壁の地獄谷の詳細

美濃 東殿山城(赤谷山城)  5つの起伏と断崖絶壁の地獄谷
久太郎の戦国城めぐり
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記事タイトル 美濃 東殿山城(赤谷山城)  5つの起伏と断崖絶壁の地獄谷
概要

美濃 東殿山城(赤谷山城) (岐阜県郡上市八幡町島谷・赤谷山)「○○城、別名□□城、又は△△城とも云う」こんな具合に一つの城郭でも呼び名が複数ある、という城は結構存在しますよね。どちらが正式名称なのか定まらない、というパターンも見受けられます。城が異なる時代で機能し改修を受けるご…… more とに名が変わったり・・城主や支配勢力が変わるごとに改名したり・・山の反対側(別)の集落からの別地名をあてられたり・・その山の容姿が「鶴」や「船」「烏帽子」や「飯盛」といった形に由来する事も。或いは城主の殿様を敬う意味で「殿」の字をあてる城名も見受けられます。理由は本当に様々で実に面白いな、と思う所でもあります。今回訪れた郡上の山城、東殿山城も様々な呼び名で呼ばれている城です。しかも一つの城郭を指すものか、2つ以上の複数の城を指すものか・・。呼び名が現在に至っても定まっていないというちょっと困った城です・・。愛宕山陣所から尾根伝いに登ると東殿山城に上がれます。東殿山城(とうどのやまじょう)は赤谷山城とも呼ばれています。東殿山城、これは城主であった「東氏の殿様の山城」という意味です。他にも気良城、犬鳴(犬啼)山城、等の呼び名も見られます。八幡山城から見て南東に聳える標高580m程の山を東殿山と呼んでいます。城はその途中にある標高520m程のところに主郭があります。写真でもわかるように計5つのピークがあり城の出郭ともいわれています。まず最初に伝・大手曲輪(第2ピーク)に辿り着きます。登山道は前回の記事の愛宕山(第1ピーク)から尾根道が続いています。踏み址はしっかりとついた山道ですので迷うことはないかと。ここ伝・大手曲輪は平場となっていますが基本的に自然地形となっています。登って行くほどに険しくなっていきますので気を引き締めて行きたいです。この辺りから岩や崖道が多くなります。尾根も細くなっていくので登山装備は必須。斜面も急になりますので一歩一歩を確実に踏み出します。三の曲輪(第3ピーク)に到着。この辺りから曲輪として整った空間を感じます。軟傾斜を伴っていますが端部に手が加えてあります。側面斜面には石垣ではありませんが天然の岩場で急遮度をだしています。さ~てやって来ました、スリリングな冒険の始まりです。非常に険しい山崖が現れます。用意されたロープも利用して登ります。全身のバランスを上手く使って手で岩を掴みながら登ります。「帰りはここを降りて行かなければならない」ことも考慮してください。無理そうだったら引き返すことも止む無し、という判断も必要です。登り切ると二の曲輪(第4ピーク)に至ります。二の曲輪はしっかりした削平地と切岸で成形された曲輪だといえます。それ故に周囲の崖も険しくなっています。ここまで来たらあと少しで一の曲輪(本丸)ですので休憩ポイントにもなります。ここで体力と足腰に余裕・自信がある方はここから南西の細道を降りてみましょう。水吞(飲)曲輪へと行くことができます。隣の谷から水を引いていたようです。急斜面のため石積で平場を確保して水の手としたと思われます。珍しくて貴重な遺構なので是非とも確認して欲しいスポットです。水呑曲輪の石垣列石へはなかなか行きずらいが一見の価値があります。さぁ、最後の急斜面に挑みます!(ここでもロープがあります)ロープと整備道(最低限ですが)がなければ登る事も難しい尾根です。しかし、ここを登り切れば本丸へ突入できますからもう一息です。この城はある意味、困難な登攀が実は味わい深い城だと気付くことでしょう。そして苦労の末に一の曲輪(第5ピーク)へと到着、嬉しいです(。>ω<。)ノ。曲輪自体はそんな広くはありません。しかし頂上独特の日差しが心地よく風が吹き抜けています。ここから眺望があればいいのですが・・残念ながら何も見えません・・。主郭は標高520メートル、周囲は切り立った断崖に守られています。赤谷山城跡カッコ東殿山城の木柱を目にする。登ってきた苦労が報われる達成感を抱きながら先ずは写真に収めます。以前は東殿山城と赤谷山城は別々の城、という通説がありました。しかし現在は東殿山城=赤谷山城という認識で正解ではないかと思います。この件に関しては次回の「もう一つの赤谷山城(仮称)」にて述べたいと思います。本丸西側面には高さ2メートル弱程の石積(石垣)が確認されます。この東殿山城の見所の一つ。降りるのは少し勇気が必要ですので気を付けて観察して欲しいです。回り込めば降りられますので堪能していただきたいですね。見事な垂直積、その存在はため息が漏れてしまうほど神秘的。本丸の背後(北)に降りるため西側に降りて回り込んでみます。岩壁沿いに桟道と鎖手摺が設置してありますが用心が必要。非常に狭くて滑りやすい箇所もありますので注意です。ここを回り込むことで背後の大堀切に対面できます。高さ8メートルに及ぶ立岩群が垂直に立ち並ぶ崖の大堀切。崖により完全に尾根を分断しています。ここより東側にある谷は地獄谷と呼ばれています。落城時に城内の人々が転落して地獄絵図のようであったことに由来します。 これだけ分断してしまうと逆に逃げることもできないというジレンマ。逃げ場を失った城内の人々が転げ落ちて行った、という逸話もあながちありそうです。当時はなんらかの方法で背後の尾根に降りられるようになっていたものと推測します。さすがに地獄谷に向かってカメラのシャッターを切ることはできませんでした。断崖の岩を堀底から見上げてみます。うわ~~たっか!!城は天文10年(1541)東常慶によって築かれました。東氏はそれ以前は北の篠脇城(大和町)を居城にしていました。しかし度々越前の朝倉氏からの侵攻を受け大きな損害を受けました。そのためもっと南の赤谷山に城を築いて居城を移したとされています。東氏の庶流で宗家を凌ぐほどの勢力を持っていた遠藤胤縁。朝倉氏侵攻を撃退する等の武功があった実力者でした。しかし八朔の祝で赤谷山城を訪れた際、常慶の嫡子、東常尭によって謀殺されました。永禄2年(1559)報復として胤縁の嫡男、遠藤胤俊と遠藤盛数兄弟は赤谷山城を攻めます。現在の八幡城山上に陣を敷き十日あまりの攻城戦の末、赤谷山城は落城。城主の東常慶・常尭は城を脱し飛騨の内ケ島氏を頼って落ちのびました。東殿山城は独立したピーク曲輪で成り立っている城郭と言えます。各曲輪同士の距離が離れ過ぎている上に高低差もあります。これでは曲輪同士の連携した防御は期待できません。いかに天険による立地条件だとしても各個撃破されれば手が出せません。ひたすら玉砕覚悟で時間稼ぎするのが関の山でしょう。しかも各曲輪の狭さでは充分な防御・宿営施設が設置できません。10日あまりで落城した、というのも妥当な期間だと思われます。豊富にあるのは投石用の礫石ぐらいでしょうか?ここに南北朝以来の構想から脱却できなかった名門・東氏の築城法も伺えます。現に遠藤氏は戦後この城を改修することはありませんでした。攻城陣とした八幡山に新城を築いて城下町を発展させていきます。郡上八幡における遠藤氏の興隆と東氏の没落滅亡・・。それを決定させたこの戦いは城の築城にも如実に表れているようでした。しかしながら、本丸の石垣や水の手曲輪、断崖大堀切など目を見張る遺構も多彩。そいうった貴重な遺構の宝庫といえる東殿山城はやはり素晴らしい山城なのです。愛宕公園から登れます。登山は困難ですが貴重な遺構との出会いがあります。登山装備と携帯食・飲料はしっかり用意して臨んで欲しい山城です。 close

美濃 東殿山城(赤谷山城)  5つの起伏と断崖絶壁の地獄谷
サイト名 久太郎の戦国城めぐり
タグ 郡上市の城めぐり
投稿日時 2020-11-01 01:00:07

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