第97景 〜島原城の詳細

第97景 〜島原城
カメも歩けば城に当たる… 城跡酔夢譚
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記事タイトル 第97景 〜島原城
概要

私の郷里、熊本県宇土市から有明海を挟んで対岸に位置する、長崎県の島原半島。そこに幕藩時代、島原藩の政庁だった島原城がある。久々の城郭酔夢譚はこちらから。島原城(天守と櫓:再建)長崎県島原市城内1-1182 →Map   日本百名城No.91別名:森岳…… more 城 高来城  築城:1624年  築城主:松倉重政 連郭式平城   (撮影:2016年7月)本丸を囲む水堀越しに見る島原城。連なる高石垣が刻む旋律美と陰影。再建された大天守と三基の三重櫓、続く長塀は白く輝き、南国の青空とコントラストをなす。まさに近世城郭の美しさが凝縮された一幅の絵を見る思いである。それでも再建は一部であり、往時には三十三の櫓が林立する一大城郭であった。築城主は松倉重政。松倉氏は代々大和筒井家の家臣だったが、重政は関ヶ原の直前に家康方につき、関ヶ原合戦や大坂の陣で少々の軍功を上げた。そして1616年4万石の大名としてここ島原に入封した。重政は一度は前任の有馬氏が居城とした日野江城に入城するが、すぐに自ら森岳の地に築城を開始する。1618年から七年もの歳月と、おびただしい労力を注ぎ込んで、小大名には不相応なこの島原城を完成させている。そのための重税とキリシタン弾圧は、重政とその子の勝家の二代に渡って続き、1637年ついに天草・島原の乱が勃発する。この江戸期最大の 内戦を引き起こした責めで松倉氏は二代で断絶した。その後は高力、松平など徳川家譜代の大名によって 藩庁として存続、城下も整備され明治維新を迎えている。 そういう概要については初回(2014年4月)の訪問前に司馬遼太郎の「街道をゆく17」〜島原・天草の諸道で確認していた。一冊を通して司馬遼太郎は松倉二代の悪政を、いつにも増して徹底的に糾弾していて、読み進めるにも気が滅入った記憶がある。 が、ここは城郭探訪記ということに立ち返り、この城を見直しておきたい。水堀と本丸・西櫓(再建)現在本丸へ入城する南西側の土橋であるが、これは後年付けられもので江戸期にはなかった。本丸は水堀で囲まれ、二の丸側から架けられた廊下橋一本で結ばれていた。 本丸と二の丸の間の堀  右手が本丸、左の二の丸とは廊下橋で繋がれていて、橋を落とせば本丸は独立し籠城することもできた。ここで一言申し上げれば、写真の通り、石垣の隙間に根を張る雑草が伸び放題で、石材の表面まで覆っている。修復されながら築城時から現存する高石垣、折角の見どころが少し残念な様子になっている。石垣の保守管理を徹底していただけたら嬉しいのだが……。では、昭和39年に復元された天守を見てみよう。天 守(西櫓側から)松倉重政が築いた天守は五層五階の層塔型天守だった。当時の新しい形式で上階が下階より規則的に逓減し、盃を重ねた塔のような形となる。また天守の装飾となる破風が全く付いておらず、これは籠城の際、天守より鉄砲を放つための配慮とも言われている。この天守は鉄筋コンクリートによる外観復元で、内部は歴史資料館である。1階がキリシタン資料で島原の乱にまつわる展示。2階に郷土史料として松平家家宝や歴代藩主の紹介。3階が民族史料として、庶民の生活史料が展示されている。天守台のすぐ近くまで、来場者用の駐車場が設けれれている。便利には違いないが、これも折角の美しい城跡を風情のないものにしている、と思うのだが……。天守からの景色(巽櫓と島原市街)五重天守は高さ33m、最上階に回縁が復元されていて四方を見晴らすことができる。城の背後、西には眉山が迫り、東は青く開けた島原湾、対岸には熊本市と阿蘇山。さらに宇土半島から天草上島の島影を望む絶景である。天守内部の展示雁行する高石垣水堀には廃城後に植えられた蓮が茂り、背後には1792年(寛政4年)噴火により崩壊した眉山が迫る。見どころの一つである。街道をゆく17〜天草・島原の諸道司馬遼太郎:朝日出版社先に紹介した街道をゆくであるが、島原半島、天草諸島について、戦国期から現在に至るまで、地理的、歴史的に作者独自の視点で捉えられた紀行文であり、一読をお勧めしたい。今に残る武家屋敷街や島原の街の描写も心に残る。天草・島原の乱についても詳しいが、関連して対岸の我が郷里、小西行長の宇土城も出てきて、いつもながら大変に興味深く読ませてもらった。 「鯉の泳ぐまち」眉山からの湧き水が水路を流れ、清廉な水を泳ぐ鯉が、島原の街に風情豊かな色彩を添えている。武家屋敷街など、市中散策も欠かせない。最後に島原の郷土料理をひとつ「具雑煮」という。具雑煮島原の乱のとき、原城に籠城した天草四郎時貞を総大将とする一揆軍は、農民に餅を兵糧として貯えさせ、山海の材料を集めて雑煮を炊き、三ヶ月戦った。これをもとに文化10年(1813年)姫松屋初代、糀屋善衛門が作ったというのがその由来である(姫松屋案内パンフレットより)島原城の西門のすぐ前に姫松屋本店があるので、登城のついでに寄ってみて。 という島原城からの酔夢譚、近々帰省の折には、是非もう一度訪れてみたいと思っている。じゃぁ、また。 close

第97景 〜島原城
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タグ 九州沖縄の城
投稿日時 2020-01-21 21:40:02

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